春菊は、ほろ苦い風味と菊に似た独特の香りが特徴の野菜です。鍋料理には欠かせない食材ですね。好き嫌いの分かれる野菜の一つですが、「良薬口に苦し」とはよく言ったもので、苦味のある春菊にはカルシウムや鉄分をはじめ、たくさんの栄養素がバランスよく含まれています。今回はそんな春菊の栄養や保存方法、選び方などをご紹介します。
春菊の特徴
ハウス栽培などのおかげで1年中出回っていますが、10月~2月が一番美味しくなる冬の代表的な緑黄色野菜です。地中海沿岸部が原産ですが、食用としているのは日本や中国など東アジア地域のみで、ヨーロッパでは主に観賞用として栽培されています。
通常、菊は秋に花を咲かせますが、春に花を咲かせることから「春菊」という名が付きました。関西では「菊菜(きくな)」とも呼ばれています。
春菊の苦味
春菊の苦味はリモネンやαピネンなどの成分が原因です。意外にもアクはそれほど強くありません。
苦味を抑えたいときには、以下の手順で下茹ですると良いでしょう。加熱しすぎると苦味が出るので、さっと茹でてください。
- 茎と葉を分ける
- 茎から茹でる
- 葉を加えて10秒で日を止める
学名 | Chrysanthemum |
分類 | キク科キク属 |
原産地 | 地中海沿岸 |
春菊の栄養素
春菊にはβ-カロテンが多く含まれており、その量は含有量が多いと言われているケールやほうれん草を上回ると言われています。春菊特有の香りは、ペリルアルデヒドやα-ピネンなど10種類もの成分によって作り出されています。
春菊に含まれる主な栄養素
エネルギー | 22kcal |
水分 | 91.8g |
炭水化物 | 3.9g |
ナトリウム | 73mg |
カリウム | 460mg |
カルシウム | 120mg |
リン | 44mg |
鉄 | 1.7mg |
ビタミンA β-カロテン | 4500μg |
ビタミンK | 259μg |
ビタミンB1 | 0.10mg |
ビタミンB2 | 0.16mg |
ビタミンC | 19mg |
食物繊維総量 | 3.2g |
春菊に期待される健康効果
カルシウムによる骨粗鬆症予防
カルシウムには歯や骨を丈夫にするはたらきがあり、ビタミンKにはカルシウムの吸収を助けるはたらきがあります。春菊にはこの2つの栄養素が含まれているため、骨粗鬆症の予防が期待できます。
カルシウムを一番多く含む野菜は小松菜ですが、小松菜のカルシウムは加熱すると減少してしまいます。それに対して、春菊のカルシウムは加熱によって損失することがないのが魅力です。
鉄分による貧血防止
鉄が不足すると鉄欠乏性貧血の原因に。成長期の子供や月経のある女性は特に意識して摂りたいミネラルです。春菊を食べる際は、ビタミンCやタンパク質と一緒に摂ることで吸収が高まります。
クロロフィルによる整腸効果
クロロフィルは体内に吸収されず、腸の老廃物を巻き込みながら体外へ排出する作用があります。クロロフィルは加熱により分解されてしまいますが、春菊に含まれるクロロフィルは熱に強いのが特徴です。
ペリルアルデヒドやα-ピネンによる食欲増進作用
香り成分である、ペリルアルデヒドやα-ピネンには胃液の分泌を促進し、食欲を増進させるはたらきがあります。
春菊の選び方
葉に張りとツヤがあり、緑色が濃く、茎の下のほうまで葉がたくさんついているものが美味しい春菊です。茎は細めの方が柔らかいため、美味しく食べることができます。
また、切り口の断面がみずみずしいもの、葉が黄色くなっていないものを選ぶようにしましょう。葉の切れ込みが浅く、葉が広いものの方が苦味や香りが弱く、切れ込みが深いものの方が風味は強いです。好みや調理方法に合わせて選んでみて下さい。
春菊の保存方法
春菊は傷むのが早い野菜なので、購入後は1~2日程度で使い切るようにしましょう。保存の際は、湿らせた新聞紙で優しく包んだ後、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室に立てて保存します。
冷凍保存
春菊は冷凍保存も可能です。その場合は、塩を入れた熱湯で30秒程サッと下茹でし、水気を良く絞ぼり食べやすい大きさに切ったら、小分けにしてラップに包んで冷凍します。和え物やお浸しなどにする場合は自然解凍、みそ汁など汁物に使う場合は凍ったままで大丈夫です。
春菊の食べ方
春菊はアクが少ないので、下茹でせずにお浸しや鍋物に使うことができます。サラダ用の春菊は生のままでも茎まで美味しく食べられますが、一般的な春菊を生で食べる場合はやわらかい葉先だけを使うと良いです。
鍋や和え物で使われることが多い春菊ですが、炒め物や天ぷらにしても美味しく食べることができます。特に春菊に含まれるβ-カロテンやビタミンKは、油と一緒に摂ることで吸収率がアップするのでおすすめです。
春菊の種類
おたふく春菊(大葉春菊)
一般的な春菊に比べて葉の切れ込みが小さく、厚みがあります。若い葉はアクが少ないので生食することができます。まろやかな香りで、独特の苦味は控えめです。北九州ではおたふく春菊の方が一般的です。
スティック春菊
茎が長く、上部だけに葉が集まり「ヤシの木」のような姿の一本立ち春菊です。葉は小さめで切れ込みが細かく、葉の色は明るい緑色をしています。クセが少なく、生食に適しています。葉だけでなく、歯ごたえのある茎も美味しく食べられます。
まとめ
冬の鍋料理に彩りを添える春菊。そんな春菊の魅力をご紹介しました。和食のイメージが強い春菊ですが、ハーブの感覚でパスタやサラダなどとして使うこともできます。加熱して食べるも良し、生で食べるも良し、お好みの食べ方で栄養たっぷりの春菊を楽しんでみて下さい。