「食欲の秋」と言われるくらい秋は美味しい食材が溢れる嬉しい季節です。そんな秋の味覚の代表とも言える栗。甘味があり、ホクホクとした食感がたまりませんね。栗ご飯や煮物の具材など食事として味わうことはもちろん、モンブランなどのスイーツとしても楽しむことができます。今回はそんな栗をご紹介します。
栗の特徴
栗が店頭に並び始めるのは8月中旬頃からで、旬は9月~10月頃です。栗は多くの品種がありますが、大きく日本栗、西洋栗、中国栗に分けられます。日本栗は、実が大きく風味が良いですが、他の栗に比べて渋皮がはがれにくく、実が柔らかいため割れやすいという特徴があります。西洋栗や中国栗が焼き栗に適しているのに対し、日本栗は甘露煮や茹で栗に適しています。
日本の栗の歴史は古く、縄文時代まで遡ります。縄文時代の遺跡からは栗が出土しており、さらには栗栽培の跡まで発見されています。また、戦国時代には、栗を乾燥させた保存食「かち栗」を栄養補給源として兵士に持たせたそうです。
学名 | Castanea crenata |
分類 | ブナ科クリ属 |
原産地 | 日本、中国、朝鮮半島南部など |
仏名 | chataigne |
独名 | Edelkastanie |
栗の栄養素
栗は炭水化物(デンプン)が主成分のため、可食部100g当たりのエネルギー量は130kcalと高めですが、炭水化物以外の栄養素も豊富に含まれており、バランスの良い食材です。
- 炭水化物(デンプン)
- ビタミンA
- ビタミンB1
- ビタミンB2
- ビタミンC
- カリウム
- 亜鉛
- タンニン
- 食物繊維
栗に期待される健康効果
ビタミンB1・B2が疲労回復を促す
ビタミンB1には糖質の代謝を促すはたらきが、ビタミンB2にはたんぱく質や脂質の代謝を促すはたらきがあります。これらのはたらきにより、三大栄養素を効率的にエネルギー変換できる為、疲労回復に役立ちます。
不足しがちなカリウムが豊富
体内の水分量を一定に保ち、正常な血圧を維持するためには、ナトリウムとカリウムのバランスが大切です。ナトリウムは普段の食事から十分摂取でき、体内で余ってしまうことが多いですが、カリウムは不足しがちです。栗には不足しがちなカリウムが豊富に含まれています。カリウムは余分なナトリウムを体外に排出し、高血圧予防に効果を発揮します。
ポリフェノール「タンニン」が抗酸化作用を発揮
栗の渋皮には、渋味のもとであるタンニンというポリフェノールが豊富に含まれています。このタンニンは抗酸化作用が高く、活性酸素を除去するはたらきがあり、動脈硬化などの生活習慣病予防に役立ちます。タンニンを摂りたい場合は、渋皮も一緒に食べられる渋皮煮がおすすめです。
ビタミンCには美肌効果も!
ビタミンCにはコラーゲンの生成を促進し、肌を若々しい状態に保つ効果がありますが、熱に弱いのが難点です。しかし、栗に含まれるビタミンCはデンプンに包まれ保護されている為、熱に強く加熱しても壊れにくいのが特徴です。また、タンニンはシミ・そばかすの原因となるメラニンを除去するため、美白効果も期待できます。
栗の選び方
鬼皮に張りがあり硬くツヤツヤと光沢のあるもの、傷や黒ずみがないものを選ぶと良いでしょう。皮に小さな穴が開いているものは、中に虫が入っている可能性があるので避けるようにしましょう。また、持った時にずっしりと重みのあるものは新鮮な証拠です。栗は時間が経つと、実の水分が蒸発して軽くなります。
栗の保存方法
硬い皮に覆われており、あまり鮮度は落ちないような印象を持たれる方も多いかもしれませんが、栗は意外と腐りやすく、また、栄養価の高さから虫がわいてしまうことも少なくありません。正しい方法で保存して、少しでも長く美味しく味わえるようにしたいですね。
栗は常温では上手に保存したとしても1週間程度しか持ちません。そのため、すぐに食べない場合は、冷蔵もしくは冷凍がおすすめです。
冷蔵保存は新聞紙に包んで
皮付きの栗を冷蔵保存する場合は、新聞紙で包んだ後、ビニール袋に入れ野菜室で保存します。新聞紙が湿ったら、新しいものに交換します。この方法で約3ヶ月保存することができます。
冷凍は皮を剥いてからが便利
冷凍の場合は、ジッパー付の保存袋に入れなるべく空気を抜いて保存します。皮付き、皮むきどちらでも保存可能ですが、あらかじめ皮をむいておいた方が便利です。使う時は、半解凍もしくは凍ったままで使用しましょう。冷凍の場合は、約半年保存が可能です。
栗の食べ方
せっかくなら甘い栗が食べたいですよね。しかし、生の栗には実は甘みがありません。栗にふくまれるでんぷんを糖に変えるためには、アミラーゼという酵素が必要です。このアミラーゼは40~70℃で活発にはたらく為、この温度帯の時間をより長くすることが重要です。
そのため、栗は必ず水から茹でます。たっぷりの水に適量の塩を入れ、中火でゆっくり沸騰させます。沸騰したら、弱火に変えて約50分茹で、火を止めたら、そのままお湯が冷めるまで放置し、その後皮をむきます。皮付きのまま茹でる方が、煮崩れが少ないためおすすめです。皮むきのものを茹でる場合は、沸騰後の茹で時間を40~45分にして煮崩れを防ぎましょう。
栗は旬の時期以外ではほとんどお目にかかれない上、調理に手間や時間がかかる為、なかなか手が出しにくい食材の一つかもしれません。しかし、栗は豊富な栄養がギュっと詰まったスーパーフード。手間をかける価値のある食材です。秋の味覚、栗を食卓に取り入れてみませんか?